蝶々のキス/片岡吉乃
とっても大切にしている一冊です。
この主人公に超萌え萌えしてしまうわたし(笑)
ほそーくて小さくて、まさに華奢な未発達な感じのする主人公のマリ。しかしその中に潜むエロティックさがわたしにはたまりません。
自由に羽ばたくことを捕らえられ、閉じ込められ、窒息した蝶―家庭の中でのマリはまさにそうです。
静かに本を読んでいても父親に取り上げられ、破られ、そのアル中の父親から性的虐待を受けます。
それでも自分の感情を表に出すことはなく、現実も非現実も明確にせず、淡々とふわふわと生きていくマリは、どことなくアウトローで素行が悪く、しかし周りの同年代より確立、悟りがある感じがする尾崎に惹かれていきます。
それでも恋愛としても際立った進展はなく、現実の十代にありがちな、決まった道筋をもたない日々が紡がれていきます。
それはとてももどかしく切なく美しい、誰もが振り返るときに濃密で甘やかに思える日々へと熟していくのです。
きっと少女だった頃があったからこそ、そしてそれはきれいなんかじゃなかったと思うのに、それでも思い出してはノスタルジックな気持ちになるからこそ、この作品はとても静かで透明で、しかしからだの奥のほうから一筋の涙がついとこぼれるのです。
物語
「彼がわらいました つられてわらいました 私は15で夏だったのです」
お酒を飲むと怖くなる父親、いつもマリのとろさを咎める姉、夫の浮気を知りつつ悩みつつ何もできずにいる母親・・・。
本を読むことが好きで、静かになにかを見つめながら生きているマリ。
釣りが好きで無口でどこかみんなとは違う尾崎くんには、なにか自分にはないものを感じて惹かれていく。
それは『自由』なのか、それとも『行動』なのか、それとも・・・
中学3年生から高校卒業までのマリの夏を描く。